高橋文樹『途中下車』

途中下車 (幻冬舎文庫)

途中下車 (幻冬舎文庫)

たとえモラルに反していようとも、ぼくは妹を愛し抜く―。それが、ぼくが選び取った生き方だ。爽やかで決然たる青春を描いて、全選考員に絶賛を浴びた新世紀の文学誕生。第1回幻冬舎NET学生文学賞受賞作。
自分の現状と近しい設定、環境の小説は読み易い。この本もその例に漏れず読み易かったのだけど、今回は筆者のリーダビリティが貢献してるのかもって思う。一見堅苦しいような文体なのに平易に読み進められるのは、不思議な感覚だった。

西加奈子『さくら』

さくら

さくら

スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた。
いかにもな、典型的なキャラクターたち。彼らは当然のように恵まれていて、さり気ないフリしてそれを圧倒的に主張してくるこの本。当然このまま終わらせるわけはないだろうと後半の“転”部分を待ち望んでいたのだけど。。。何だよ。突きつけられた不幸の前に、あっさり脱落かよ。こりゃあ何だい?俺に絶望しろってことかぃ?ちょっとはその苦境に抵抗してくれよ。足掻いてその克服を描いてくれよ。

優しい空気。それだけ。何にも、何一つ変わったことなどない。

どす黒い

形態は違えど、コンプレックスを抱えていてそれに苛まれている人はいる。確実に、いる。他者からの笑いを必要以上に侮辱されたと捉えてしまって、彼は自らが生み出した嘲笑の苦しみに飲み込まれてしまう。その気持ちは僕も充分に分かる。そっか、一人じゃないんだな。
…というのは錯覚。結局は自分が主演のこの世界は自分自身からしか存在しない。このパーソナリティを受けてもがき苦しみ、それで過ごしていくのは他の誰でもない自分自身。仲間だとか、苦しみの分かちあいだとか。何を見てそんな戯言を言っているのか。
つまりもうどす黒くて真っ暗闇ってことで。そろそろ寝よう。

朝焼けは未だ遠く

現在午前3:43。ここまでくると意地でも起きててやろうと誰にともなく対抗心を燃やしてしまう。
今日から別の場所で日常雑記を綴る場所を設けた。きっとこの飽き性なので三日ともたないと思う。奇跡的に続けばいずれリンクを貼りたいな、とか思うのです。

やっぱり人と触れ合っている人の書く文章とは差ができてしまうんだ。今日はひしひしと実感した。感情がこもってないというか、無機質な感じしかしないんだよなぁ。自分の書く文章は。面白みとか、他人が感情を共有できる部分を持った、そういう文章が書きたい。けど無理だと思う。

だからアップルのiMac G5欲しい!

急に活字を追う集中力が切れてしまって、今は公務員の勉強のみに没頭してます。電車の中でいつも通り本を開くのだけど、目に飛び込んでくる一面の文字たちを追っていく気がしないんだわ。こういうとき、柔らかく受け止めてくれる村上春樹の文体の出番かと思ったがどうやらそれでもダメみたい。今は結構、公務員の勉強が楽しい。

FAB FOX

FAB FOX

買った。生協で15%引きね。iPodを使い出してからCDに対する所有欲はめっきり落ちていたのだけど、たまにこういう衝動買いもいいもんね。自分一人だけの小さな幸福感に浸れる。あと、手帳を買ったよ。真っ赤な手帳と黒の専用ペン。

茜色の夕日が沁みる。そういえば夏に音楽缶で見たPVも良かったな。

本谷有希子「江利子と絶対―本谷有希子文学大全集」

江利子と絶対

江利子と絶対

引き籠もりの少女・江利子と、"絶対"と名付けられた犬のコンビが繰り広げるぬるい日常を姉の視線から描く表題作『江利子と絶対』。頭髪に問題を抱えた中年男・多田と、その隣人の帰宅を生垣に潜んで待つ女・アキ子。ふたりの悲惨な愛の姿を過剰なまでのスケールで描き出した『生垣の女』。問題児でいじめっ子の波多野君と、その手下の僕と吉見君。3人の小学生が迷い込んだ、窓のない屋敷は…。手に汗握る殺人鬼との攻防を描く、ホラー傑作『暗狩』の3編を収録。
すごいのきたよこれ。えげつない部分をこれでもかってほどにほじくり出してくる。痛い痛いって悲鳴を上げたくなるくらいに抉ってくる。言いようのない感情とか狂気にしか見えない言動を寸分狂いなく綴れるその力は怖いくらいに素晴らしい。こっちが処女作で、二作目の「腑抜けども〜」よりも読み易い文章っていうのは何故なんだろうって疑問にも思ったけど、とにかくスピード感があって臨場感ある文章も読者をグッと引き込ませます。
いやぁ、これは凄い。一冊所有して、これを読ませて共感してくれる人を探し回りたいくらい。これで自分と同じくらい共感してくれるなら僕はその人とぜひ親友になりたい。

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絲山秋子「スモールトーク」

スモールトーク

スモールトーク

「前向きな人間には死が近づいてくるんだよ」「じゃ、回り道してやろうぜ。どうせこの世の全てが回り道なんだ」――6台のクルマをめぐる、回復と喪失の物語。
残念ながらクルマに関する知識が全くない為に、存分にこの作品を味わうことはできなかったと思う。それでもクルマに対する思い入れ、愛情は伝わってきたよ。相変わらず力の抜けたぬるーい人間は好感が持てます。
ああ、最新刊が読みたいー。