日日日「ちーちゃんは悠久の向こう」

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」―幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながらも、「僕」の平穏な日常はいつまでも続くはずだった。続くと思っていた―あの瞬間までは。怪異事件を境に、ちーちゃんの生活は一八〇度転換し、押さえ込んでいた僕の生活の中の不穏まで堰を切って溢れ始める…。疑いもしなかった「変わるはずがない日常」が音を立てて崩れ落ちていくさま、それをただ見続けるしかない恐怖を描いた、新感覚のジュブナイル・ホラー。世紀末の退廃と新世紀の浮遊感を内包した新時代作家・日日日(あきら)、堂々デビュー。
んー、よく分かんなくなってきた。これでいいのか。
明らかに質が違う、僕がこれだ!と思う他の文学とは。これは文学じゃないよね?降ってわいたような不幸な設定が全然共感を呼ばないし、キャラクターだって描けてる?こんなんでOK?若いとかさぁ、そういうことじゃなくて世界観、、、みたいなものがどうかと思うんだけど。ちょっともう今後手に取ることはよほどでない限りないだろうな、この作者は。

小路幸也「HEARTBEAT」

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

優等生の委員長と不良少女の淡い恋。できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、すべてはそこから始まった。彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、十年後、あるものを渡そう―そして十年が過ぎ、約束の日がやってきた。しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る人物が現われる。彼女は三年前から行方がわからなくなっていた。居場所を捜し出そうと考えたとき、協力者として僕の脳裏にひとりの同級生が思い浮かぶ。かつて僕に、マッチブックの格好良い火の点け方を教えてくれた男が―約束を果たすため、ニューヨークの「暗闇」から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、そして最高の「相棒」。期待の俊英が放つ、約束と再会の物語。
彼にはミステリー的な要素を望んじゃいけないというのがよく分かった、彼の著作二作目にしての早合点だけど。優しい空気の充満する文体と世界観はほんとに好感がもてるのに、後半の釈然としない種明かしが…。最後の要素なんか蛇足なんじゃないかなぁ、って思うのだ。そりゃあそれがあってこそこのタイトルがさらに光るんだろうけど、そいつのおかげで完全な笑みで読了とはならなかったもの。今までせっかく読み進めて築き上げてきたものを、台無しにしてしまってるんじゃないかなと思った。

桜庭一樹「少女には向かない職業」

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

島の夏を、美しい、とふいにあたしは思う―強くなりたいな。強くて優しい大人になりたい。力がほしい。でも、どうしたらいいのかな。これは、ふたりの少女の凄絶な"闘い"の記録。
肥大化した自意識、つまりは自意識過剰で多少の不幸をブレンドすれば青春小説なんて書けてしまうんですかね?いや、何偉そうなことほざいんてんだよとか自分でも思うんだけど、読書前の期待が大きかった分残念な気持ちがひとしおなんですよ。
過度な期待は禁物。想像力が現実を壊す。

絲山秋子「袋小路の男」

袋小路の男

袋小路の男

指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間。"現代の純愛小説"と絶讃された表題作、「アーリオ オーリオ」他一篇収録。注目の新鋭が贈る傑作短篇集。第30回川端康成文学賞受賞。
表題作には全く共感できなかったけど、「アーリオ オーリオ」が素晴らしかった。

現場作業の後で工場内の風呂に入っても、哲は家に帰ると必ずシャワーを浴びた。

とかさ。こういう描写がその人物をぐっと魅力的にしてくれるんだわ。相変わらず人物が魅力的(完全主観)。美由の純粋さと哲の真摯さが、もう。

豊島ミホ「青空チェリー」

青空チェリー (新潮文庫)

青空チェリー (新潮文庫)

入学して一ヶ月、うちの予備校の隣にラブホが建った。以来あたしは屋上からのぞきちゃんな日々。ゆるしてちょうだい、だってあたし18さい。発情期なんでございます…。明るい顔して泣きそな気持ちがせつない、三つのストーリー。第1回女による女のためのR‐18文学賞読者賞受賞作。
豊島ミホが何でこんなにいいのか、それが掴めなくておぼろげに「比喩表現がいいのかなぁ」なんて陳腐なことを思っていたら、巻末の藤田香織さんの書評が見事に全てを代弁してくれていて溜飲が下がった*1
学生モノ、特に自分と同じ大学生の話になると極端に感情移入してしまうのは悪い癖なんだけど、それでもこの話は良かったって強く思えるのが「誓いじゃないけど僕は思った」。ていうか、何このタイトル。素敵すぎ。

無限とゼロが似ているように、その時の僕の心は、果てしなく広がって宇宙の終わるところまで届きそうな気がしたし、同時にまっしろでからんと乾いた感じもした。

甲高い笑い声が上がる。みんな小さなことでバカ笑いするのだ。自分が今、一番自由な時間を生きていて、楽しくてしょうがないのだと主張するように。僕もそこに居たはずなのに、笑い声の輪が遠く思えた。

ごめん、二つ目は投影する感情が全く違うものなんだけど、自分の気持ちを照射して胸に残ってしまった。
ホントにこれからも応援していきたい作家さん。恥ずかしいけど頑張って文庫本を買った甲斐があったさぁ。
(伏せ顔の著者近影を見てずきゅーんと射ち抜かれたのは秘密にしておきたい)

*1:多分、適当な言葉じゃない。

関係ないけど、携帯をなくした。

この程度で苦慮しているなんて、中学生レベルの水準。拘束もされず、かと言って糾弾もされず。興味を引くこともない無関心たるポジション。
どうやら分かってきた、自分自身の明確な輪郭が。「自分は人間関係が苦手だから」「大勢は好きじゃない」などと吹聴しながら、その実根底では人との接触を求め続けていて一人っきりということを極端に恐れていた。現実と望むこととの乖離が苦しくて思い煩うこともあった。
それでも人間はどうやら時を経るごとに変化していくのは確かなようで。今日ようやくはっきりと自分が独りの環境を望んでいることが分かった。僕は自分が嫌いだし、尊敬できる人と巡りあえたこともない*1。つまりは人間が嫌いなのだ、今のところ。
これからに絶望はしたわけではない。まだ八合目くらい。生涯の宝くじの大部分がスカだった僕だけど、まだもう少しは希望が残っているはずで、残り僅かなその可能性の中で革命的な出会いがあるかもしれない。だから悲観はしない。
寧ろ今は楽になった。先に言った乖離に悩む必要がなくなったからね。閉鎖的で風通しの悪いこの空間はひどく居心地が良い。

*1:人に恵まれなかったな、なんてまた最低なことを思う。