本谷有希子「江利子と絶対―本谷有希子文学大全集」

江利子と絶対

江利子と絶対

引き籠もりの少女・江利子と、"絶対"と名付けられた犬のコンビが繰り広げるぬるい日常を姉の視線から描く表題作『江利子と絶対』。頭髪に問題を抱えた中年男・多田と、その隣人の帰宅を生垣に潜んで待つ女・アキ子。ふたりの悲惨な愛の姿を過剰なまでのスケールで描き出した『生垣の女』。問題児でいじめっ子の波多野君と、その手下の僕と吉見君。3人の小学生が迷い込んだ、窓のない屋敷は…。手に汗握る殺人鬼との攻防を描く、ホラー傑作『暗狩』の3編を収録。
すごいのきたよこれ。えげつない部分をこれでもかってほどにほじくり出してくる。痛い痛いって悲鳴を上げたくなるくらいに抉ってくる。言いようのない感情とか狂気にしか見えない言動を寸分狂いなく綴れるその力は怖いくらいに素晴らしい。こっちが処女作で、二作目の「腑抜けども〜」よりも読み易い文章っていうのは何故なんだろうって疑問にも思ったけど、とにかくスピード感があって臨場感ある文章も読者をグッと引き込ませます。
いやぁ、これは凄い。一冊所有して、これを読ませて共感してくれる人を探し回りたいくらい。これで自分と同じくらい共感してくれるなら僕はその人とぜひ親友になりたい。
それにしても。表題作「江利子と絶対」を電車の中で読んで「こりゃとんでもない!」とどす黒い興奮を覚えながら飲み会の集合場所に行くような奴が、軽ーいノリのバイト飲みを楽しめるわけがないなぁ、と我ながら思った。切り替えがうまくできなかったよ、この作品のインパクトが強すぎて。