小路幸也「HEARTBEAT」

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

優等生の委員長と不良少女の淡い恋。できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、すべてはそこから始まった。彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、十年後、あるものを渡そう―そして十年が過ぎ、約束の日がやってきた。しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る人物が現われる。彼女は三年前から行方がわからなくなっていた。居場所を捜し出そうと考えたとき、協力者として僕の脳裏にひとりの同級生が思い浮かぶ。かつて僕に、マッチブックの格好良い火の点け方を教えてくれた男が―約束を果たすため、ニューヨークの「暗闇」から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、そして最高の「相棒」。期待の俊英が放つ、約束と再会の物語。
彼にはミステリー的な要素を望んじゃいけないというのがよく分かった、彼の著作二作目にしての早合点だけど。優しい空気の充満する文体と世界観はほんとに好感がもてるのに、後半の釈然としない種明かしが…。最後の要素なんか蛇足なんじゃないかなぁ、って思うのだ。そりゃあそれがあってこそこのタイトルがさらに光るんだろうけど、そいつのおかげで完全な笑みで読了とはならなかったもの。今までせっかく読み進めて築き上げてきたものを、台無しにしてしまってるんじゃないかなと思った。