中村航「ぐるぐるまわるすべり台」

ぐるぐるまわるすべり台

ぐるぐるまわるすべり台

どうしたんだろう。何だこれ、作者は何か勘違いしちゃってるんじゃないか?と思わされてしまう作品だった。ここでも登場人物の造形が致命的。小生意気でどこか自己愛臭が漂う、単なるいやな奴に成り果てている彼らたち。主人公は塾長をえらく買っているけれど、こっちとしてはちっとも魅力的に感じられないから共感のしようもない。抽象的な言葉で主人公は自分の意見を主張するけれど、イマイチその本旨が汲み取れない。格好つけた気障な野郎だとしか解釈できないんだけども。
作家自身が自分の登場人物に酔ってしまっている気がした。もっと素朴だといいなぁ。そうしないと、登場人物のこの性格にこの文体は食い合わせがすこぶる悪い。温度の低い文体は嫌いじゃないけど、それを活かすも殺すもキャラクター次第なんじゃないかなぁ。
中村航を一気に読んだ所為か、これは食傷気味になってしまったのかもしれない。