豊島ミホ「青空チェリー」

青空チェリー (新潮文庫)

青空チェリー (新潮文庫)

入学して一ヶ月、うちの予備校の隣にラブホが建った。以来あたしは屋上からのぞきちゃんな日々。ゆるしてちょうだい、だってあたし18さい。発情期なんでございます…。明るい顔して泣きそな気持ちがせつない、三つのストーリー。第1回女による女のためのR‐18文学賞読者賞受賞作。
豊島ミホが何でこんなにいいのか、それが掴めなくておぼろげに「比喩表現がいいのかなぁ」なんて陳腐なことを思っていたら、巻末の藤田香織さんの書評が見事に全てを代弁してくれていて溜飲が下がった*1
学生モノ、特に自分と同じ大学生の話になると極端に感情移入してしまうのは悪い癖なんだけど、それでもこの話は良かったって強く思えるのが「誓いじゃないけど僕は思った」。ていうか、何このタイトル。素敵すぎ。

無限とゼロが似ているように、その時の僕の心は、果てしなく広がって宇宙の終わるところまで届きそうな気がしたし、同時にまっしろでからんと乾いた感じもした。

甲高い笑い声が上がる。みんな小さなことでバカ笑いするのだ。自分が今、一番自由な時間を生きていて、楽しくてしょうがないのだと主張するように。僕もそこに居たはずなのに、笑い声の輪が遠く思えた。

ごめん、二つ目は投影する感情が全く違うものなんだけど、自分の気持ちを照射して胸に残ってしまった。
ホントにこれからも応援していきたい作家さん。恥ずかしいけど頑張って文庫本を買った甲斐があったさぁ。
(伏せ顔の著者近影を見てずきゅーんと射ち抜かれたのは秘密にしておきたい)

*1:多分、適当な言葉じゃない。